この読解力のレベルによって、文脈を読み取れなかったり、筆者の意図を汲み取れず誤解を招いたり、真意が見えず勝手に決めつけたりします。その結果、人とまともに関係を築けない人、言葉がわからない頭の悪い人、説明に手間がかかる面倒くさい人という印象を与えてしまい、自分にとってかなりのデメリットを被ることになります。
そこで読解とはどういう状態か、読解力が無いと困ること、読解力が無い人がやりがちなこと、読解に必要なものは何なのかについて解説します。
読解と読書と感想は違う
さて読解ですが、そもそもこの意味をご存じでしょうか?辞書を引くと「文章を読んで内容を理解すること。」(旺文社国語辞典参照)とあります。ということは、文章を読んだだけではダメなんです。読んだだけというのは、ただの読書です。
加えて内容の理解が必要で、内容のジャッジや決めつけをしてもいけないのです。あなたがどう思ったか、どう感じたかは感想であって、読解ではありません。大体感想の場合、目線が自分にチェンジしてしまっていることからも、違うのがわかります。
さらに言うと、読解を大和言葉にすると読み解くと言います。つまり読んで解き明かすということ。書かれている文章を読み、尚且つ自分がどう思ったかではなく、著者がその文章の中で何を言わんとしているのかを解明するのが読解なのです。
さらに言うと、読解を大和言葉にすると読み解くと言います。つまり読んで解き明かすということ。書かれている文章を読み、尚且つ自分がどう思ったかではなく、著者がその文章の中で何を言わんとしているのかを解明するのが読解なのです。
読解力がないと困ること
読解力が無いと困るのは誰でもわかると思いますが、実際にどういうシチュエーションで問題を発生させるのでしょうか。
①人間関係のすれ違いが起きる
まず挙げられるのは、人間関係のすれ違いでしょう。読解ができないと相手の言っていることを正確に理解できないため、間違った認識をしてしまいます。時間を間違えるのも良くないですが、人間関係ともなれば一生の仲違いにだってなりかねません。人の気持ちがわからないヤツ、空気の読めないヤツ、相手の立場に立って考えられないヤツといって、レッテルを貼られるかもしれません。そうなると周囲から孤立し、グループ内にいずらくなってしまいます。
②生活で困る
物語や随筆なら登場人物の行動から心情や理由などを読み取れないことになります。そうなると物語の真相や登場人物の表の顔とは裏腹な心情がわからなくて、あまり面白みを感じないかもしれません。
実社会では、説明書の内容がわからなくて上手く操作できない、契約書の注意事項がわからなくて不利な条件で契約してしまうといったことが起こりえます。試験問題がわからなくて問題が解けないなんてのも、あるあるだと思います。
実社会では、説明書の内容がわからなくて上手く操作できない、契約書の注意事項がわからなくて不利な条件で契約してしまうといったことが起こりえます。試験問題がわからなくて問題が解けないなんてのも、あるあるだと思います。
③浅い関係しか作れない
読解ができないことで相手の真意を理解することができないため、上辺だけの理解に留まってしまいます。その結果、当たり障りのない人付き合いに終始してしまい、相手と深く親密な関係を築くことができません。しかもそのような浅い関係は切ったり切られたりが容易なため、関係を持ったとしても短期間で終わったり、自然消滅しやすかったりします。
④騙されやすい・振り回されやすい
読解ができないということは相手の意図が読めないわけで、そうなると相手の言うことを鵜呑みにしてしまい騙されたり、裏切られたりすることが多くなります。
人間関係においても、読解力がないと相手の行動や言葉尻にしか目が行かないので、その奥にある相手の本心に気づくことができず、相手の反応への対処に終始するばかりで翻弄されることになります。
人間関係においても、読解力がないと相手の行動や言葉尻にしか目が行かないので、その奥にある相手の本心に気づくことができず、相手の反応への対処に終始するばかりで翻弄されることになります。
読解力がない人の特徴
とはいえ自分に読解力があるかどうかわからないと、改善のしようがありません。そこで読解力のない人にありがちな行為を挙げてみました。どの点が自分にあてはまっているかチェックしてみてください。
①早とちりが癖になっている(一部の単語しか見ていない)
まず一つ考えられるのが、早とちりが多いという点です。このタイプは全文を読む前に、一部の単語だけを見てわかった気になってしまっています。これでは誤読が頻発し、読解以前の問題になります。
実際私の母がこのタイプで、回転寿司のポップの「ふり塩鮪一貫盛り」の「ふり」だけを見て、「ぶり」だと勝手に判断しておりました(写真まで載っていたにもかかわらず)。こうなると魚の種類まで異なってしまうので、思っていたものと違う商品が届くことになります。
実際私の母がこのタイプで、回転寿司のポップの「ふり塩鮪一貫盛り」の「ふり」だけを見て、「ぶり」だと勝手に判断しておりました(写真まで載っていたにもかかわらず)。こうなると魚の種類まで異なってしまうので、思っていたものと違う商品が届くことになります。
他にも精神科診療で除外診断(他の疾患や障害を併発していないか確認するための診察)と言われる診療行為があるのですが、その「除外」の字だけを見て患者を排除している差別的だと勝手に判断して、口論になり関係悪化を招いている人もいました。
恐らく根底に、特定の物に注意が向くと他のことに目が行かなくなるシングルフォーカスの特性があるものと考えられます。これは脳の特性とも絡む問題なので、結構複雑です。
恐らく根底に、特定の物に注意が向くと他のことに目が行かなくなるシングルフォーカスの特性があるものと考えられます。これは脳の特性とも絡む問題なので、結構複雑です。
②文法理解が不十分
結構見過ごされがちだと考えられるのが、文法理解の度合いです。特に接続詞や代名詞の扱いが意外とズレていたり、見逃したりする人が散見されます。
例えば逆説の接続詞(が、しかし、だが、にもかかわらずなど)が使われているにもかかわらず、順接としてとってしまい、辻褄の合わない理解をしてしまう人を見たことがあります。
あと一定数いると言われているのが、代名詞やこそあど言葉(これ、それ、あれ、どれ、ここ、そこ、あそこ、どこなど)の差している物事がどれなのかがよくわからないという人です。日常の会話で差してるものがわからないのは、相手の説明不足のケースも多々あるので問題にはしませんが、文章の場合は前文が必ずあるので、事前に差しているものが書いてあります。そう、事前に説明した上で代名詞が使われているにもかかわらず、差しているものがわからないという人がいるのです。このケースは発達障害者によく見られるとのことです。
あと一定数いると言われているのが、代名詞やこそあど言葉(これ、それ、あれ、どれ、ここ、そこ、あそこ、どこなど)の差している物事がどれなのかがよくわからないという人です。日常の会話で差してるものがわからないのは、相手の説明不足のケースも多々あるので問題にはしませんが、文章の場合は前文が必ずあるので、事前に差しているものが書いてあります。そう、事前に説明した上で代名詞が使われているにもかかわらず、差しているものがわからないという人がいるのです。このケースは発達障害者によく見られるとのことです。
③文脈が読み取れていない
文脈というのは辞書によると、「文章の筋道。文章の続きぐあい。」(旺文社国語辞典参照)とあります。ちょっとわかりにくいので説明すると、その文章から傾向やプロセスを見出すことと考えられます。なのでこの傾向やプロセスから逸脱していると、間違った解釈になるので読解力がないことになります。
④自分視点しか持てない
自分視点しか持てないというのは、読解する上でかなりハンデになります。というのも読解というのは、著者の考えを文章から推し量り理解する行為なので、まず著者の視点に立たねばなりません。しかし自分視点しか持てないとなると、そのスタート地点にすら立てないことを意味するからです。
というのも自分視点で見たものというのはあくまで自分から見た場合の話であって、著者から見たものとは異なるからです。なので一旦自分目線や自分の考えを捨てる必要があるのですが、これができないと間違った視点で見てしまうので見ているものが異なってしまい、間違った解釈をすることになります。
⑤自分の考えや解釈を勝手に入れてしまう
読解では著者の意図を問われているのに、「自分はこう思ったから」とか「自分はこう判断したから」と言って、勝手に自分の都合で解釈を変えてしまう人もいます。常に自分視点しかなく、先入観にとらわれやすい人にありがちです。ただそれは読者であるあなたの考えであって、著者の考えではありません。これは考えのすり替えが起こっており、もはや読解ではありません。
読解の主体はあくまで著者であって、自分ではありません。なので書かれた文章の範囲内で言えることを理解しなければならず、自分の考えを盛り込むのは言語道断でNGです。これは著者が言ってないことを言ったように見せかける行為で、デマ・虚偽になるので止めましょう。
⑥学習障害の可能性
最後に注目したいのが学習障害です。近年発達障害の一形態として、学習障害があることがわかってきました。その学習障害にもいくつかのパターンが存在し、その一つとして読字障害があります。これは文章を読むのに困難を抱える障害で、
①一個一個の単語の意味はわかるが、文章になるとわからない。
②文を端から順番に読むことができず、いくつかの行を飛ばしてしまう。
③文字や語彙の習得が困難で、わからない言葉が出てきても調べずに飛ばしてしまう。
③文字や語彙の習得が困難で、わからない言葉が出てきても調べずに飛ばしてしまう。
などの症状があります。
読解力を高めるには
では実際に読解力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか?以下の点を注意、トレーニングをしてみましょう。
①すぐに反応せず、落ち着いて全部を読む
早とちりの人はとにかく反応や結論を焦り過ぎです。まずは落ち悔いて冷静になることが必要です。加えて確認する癖がついていないので、最初は面倒に感じるでしょうが失敗するほうがもっと痛いので、いちいち確認を挟むトレーニングをしましょう。1カ月程度続ければ習慣化して面倒くささも無くなり、落ち着いて読めるようになります。
②文法を厳密に守る
文法に従わず自己流の読み方をしていると、当然著者の真意とは異なった解釈になってしまいます。そうならないためには文法をちゃんと守る必要があります。これをできるようになるには、接続詞や助詞、助動詞を見逃さないこと、代名詞の差しているものが何かわかること、文章になった時にどんな意味になるかを考えることが必要です。
③背景事情を推理しながら読む
文章を書く上で、必ず背景が存在します。この背景を基にして著者は思考を巡らして文章を書き、文脈が形成されて行きます。その登場人物の行動の裏には何があったのか、著者の言論のベースには何があるのかなどです。そしてこれは決めつけではなく、文章から理屈で導き出す能力が必要です。
④自分視点を一旦捨てる
常に自分本位の見方をしていると、相手も自分と同じように考えて当然などと思ってしまいます。しかし人間は十人十色、必ず相手の考えていることは自分とは異なります。同じことなどありえないので、自分視点では絶対に読解できません。
著者の視点を持つには、一旦自分視点を捨てなくてはなりません。中には自分視点を捨てたら自分でなくなる、相手に折れたことになるから嫌と考える方がいますが、読解とは別な言い方をすれば相手の出方をうかがう行為なので、決して自分を失う行為ではありません。例えばサッカーのフォーメーションを決める際に、一旦相手陣営の身になってシミュレーションしますがこの時点では決して相手に負けたわけではないですよね。むしろまだ、試合すら始まっていない。かつ、このシミュレーションをしないと勝てる試合ができない。これを読解でもするのです。
⑤自分の考えは脇に置き、書いてあることのみに集中する
人によっては自分の中のポリシーや思想を人生の柱にしている場合があります。それは大いに結構ですが、それと著者の言いたいことは違います。拡大解釈したり、曲解したりするのは自分が勝手に加えた部分であって、著者の言った事ではありません。
確実に著者が言ったと断言できるのは、文章の中に書かれていることのみです。「これはこうに違いない」とか「こういう解釈があってもいいだろう」というのはあなたの好みであって、著者の発言ではありません。このタイプの人は自他の境界が曖昧なので、これは自分の考えなのか、著者はそこまで書いていたのかちゃんと確認して、自分と他人の考えをはっきり分ける習慣をつけましょう。
⑥語彙を増やす
読解力が低い人の中には、語彙のバリエーションが少ない人もいます。これだと文章を読もうとしても知らない単語が度々出てきて、意味がわからないという事態になりやすいです。そうならないためにも普段から意識的に知らない単語を調べたり、自分から使ってみたりして語彙を増やす必要があります。
まとめ
読解力は一朝一夕に身につくものではありません。長い時間をかけて地道にトレーニングしなければならず、根気が必要な作業ではあります。しかし読解は文章を読むうえで必須のスキルですし、生活でも趣味でも影響は多岐にわたるので身についていないと本当に苦労します。なので少しづつトレーニングしてできるようになっていけば、生きづらさが解消していきますよ。