この原因として資生堂は、中国市場での価格競争の激化や買収した米国ブランドの販売低迷を挙げているが、これだけでは国内市場の説明がつかない。実はここに深い闇が隠されているのだ。
理想的な建前を追い求めた経営陣
冒頭で触れたように、資生堂は女性活躍を目指していた。化粧品という業界柄女性職員が多い会社であるためその力の入れようは半端なく、日本一を目指していた。その方針で育児休業や育児時間制度の導入、事業所内保育所の開設、女性管理職育成のための研修など、様々な福利厚生やサービスを多数導入し、その甲斐あって内閣府による「女性が輝く先進企業表彰」で「内閣総理大臣賞」を受賞した。
負担増の職員からの不満
だが、これが現場で大きな軋轢を生んだ。というのも、育休を取りやすくなったことが問題となった。イメージ先行型の人からしたらいいことのように聞こえるだろうが、現場からしたら大迷惑になった。産休だけでなく育休もたっぷり取れるとなると、それだけ長い期間職員が離脱することになる。その職員の仕事は残ったメンバーに割り振られることになったので、一人頭の仕事量が増えた。
しかも、この負担増がみんなに均等に振り分けられるならまだよいが、出産は計画的にはいかないから育休取得にバラつきが出るし、未婚の職員にいたっては毎回受け皿にされるため仕事量の不均衡が生じてしまった。これによって職員の怒りが爆発し、退職や業務停滞につながってしまった。業績低迷に転じてしまっては新しい人員の補充などできないから、福利厚生を縮小しない限りこの状態は収まらないだろう。
このような職場環境では、日々の仕事をこなすことで精いっぱいになってしまう。そうなると、売上向上という本来一番取り組まなくてはならない課題が疎かになる。しかも、疲れが溜まる一方ではモチベーションも上がらない。売り上げ低迷は必定だろう。
休暇とキャリアアップのジレンマ
さらにもうひとつ矛盾点があるのが、キャリアアップだ。それだけ休暇を取りやすいということは現場を離れている期間が長くなるから、キャリアを積む期間も削がれる。その状況で女性管理職の増加といわれても、実績と肩書きが見合わないものになりかねない。
さらに他人の肩代わりによって一人当たりの仕事量が増えている状況で、研修まで受けるのはさすがに残業必須の無理ゲーだ。これでは反って働き方改革に逆行しており、職場のブラック化といえる。こんなこと職員は誰もやろうとは思わないだろう。
現場を知らぬ者がおちいる失敗
では、この失敗の本質は何だろうか?それは、
「現場を知らぬ者が、聞こえの良い理想だけを夢見て、リスクを無視したこと」
である。当時社長だったのは長谷川氏だったのだが、彼はいわゆる「プロ経営者」だった。プロ経営者というのは、大雑把にいうと外部から招聘された経営者のことで、生え抜きや創業家とは異なり外部の人間であることが特徴だ。
となるとどうしても、現場感覚が生え抜きや創業家よりも乏しくなりがちで、職員にどういう負担がかかり、どういうトラブルに発展し、どういう不利益を被るかへの想像力が足りなくなる。
しかも経営者自身がスポークスマンを兼ねていると、どうしても外からどう見られるかに神経を奪われて、リップサービスに走りやすい心理が生まれる。そうなると企業イメージの向上のために、視聴者受けの良い非現実的な理想を掲げるハードルが下がってしまう。その非現実性のしわ寄せは自ずと現場の負担となってしまう。職員からしたらとんだ災難にしかならない。
結局現場を回しているのは職員なわけで、職員の負担増加や気持ちが載らないことをやるとモチベーションとポテンシャルが下がって、上手くいかない。やはり経営者であっても、現場感覚のないのは致命的だ。
結局現場を回しているのは職員なわけで、職員の負担増加や気持ちが載らないことをやるとモチベーションとポテンシャルが下がって、上手くいかない。やはり経営者であっても、現場感覚のないのは致命的だ。
























