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2026年1月17日土曜日

精神科医は本当に疾患の真偽を見抜けるのか?(ローゼンハン実験)

 数ある診療科の中で、最もミステリアスな精神科。精神という一見ボヤッとしたものを扱うだけに、掴みどころがなく、半信半疑な人も多いことだろう。内科や外科と違って、ほぼ問診に頼らざるをえないところも疑念の目を向けられる要因となっている。

 実はこの疑念から、本当に精神科医は患者の精神疾患の真偽を見抜けるのか実験した人物がいる。それは、スタンフォード大学名誉教授のデイビッド・ローゼンハン(David L. Rosenhan、1929年11月22日 - 2012年2月6日)だ。彼は精神科医の診断が本当に正しいのか、健常者が偽装しても見抜けるのか疑問に思い、実際に実験を敢行したのだ。この実験は、1973年の科学雑誌サイエンスに掲載された。


 実験の内容


 では、ローゼンハンはどんな実験をしたのか?実は、2回に分けて別々の条件で行っていので、それぞれ見ていく。


 ①精神科医へ事前通告なしに、偽装した患者を送りこむ実験

 最初にやった実験は、女性3人男性5人(内、1人はローゼンハン本人)に幻聴があるふりを、複数の精神科医の前で訴え演技させるもの。精神科医にはそのことは一切知らせず黙って送り込んだ場合でも、ちゃんと偽者の患者と見抜けるのか実験した。ワシントンD.C.にあるセント・エリザベス病院などが対象。


 ②事前通告後、何人の偽装患者がいたか数を問う実験

 1回目の実験の後、不服を言ってきた精神科医からリベンジを申し込まれた。そこで今度は事前に偽装患者を送ることを伝えた後、その間に診察した患者の中に何人の偽装患者が含まれていたのかを問う実験をした。


 実験結果


 これらの実験によって、精神科医療を揺るがすかなり衝撃的で面白い結果が2つとも判明した。


 ①の実験

 まずは最初の実験だが、8人全員入院させられてしまった。つまり、100%の確率で精神疾患を患っていると誤診したのだ。幻聴がなくなったと訴えても平均19日間の入院を余儀なくされ、長い者では1ヶ月ほどにも及んだ。

 しかも退院するにあたって精神疾患(しかも8人中7人は統合失調症と誤診)を認めるよう条件が課され、抗精神薬を服用することを求められた。


 ②の実験

 後日行った実験で、事前通告してから新患193人の内、41人が偽装患者の可能性ありとの見方を示し、精神科医1名と職員1名によって19人が疑いありとして結論づけた。

 しかし実際には、ローゼンハンはただの1人も送り込んではおらず、またしても散々な結果に終わった。


 結論


 このことから精神科医も所詮人間であり、精神疾患など見抜けないということの証明になってしまった。もちろん一部の精神医学会からは反発もあり、疑似科学であるとの批判も出た。

 だがその後、2008年にBBCにて反証的な実験を行った。精神疾患の診断を受けたことのある人5人とそうでない人5人の計10人を用意。精神科の権威に精神疾患の診断を受けた5人を特定してもらう実験をしたところ、2人的中、3人誤診というまたしても散々な結果に終わった。

 結局、他人の頭の中をのぞけないし、医師も人間の端くれでしかないから、精神疾患を見抜くなど不可能なのだ。だから、精神疾患の診断および診断書なんぞなんの論拠にもならず、証明にはならないということだ。




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