株式投資における、確定申告方法の使い分け

 5月21日の記事で、各種投資の確定申告及び税率について書きましたが、株式投資(証券投資信託も含む)に関しては複数の申告方法があり、それによっても税率などが変わってくるので、今回はそのタイプ別活用方法について述べたいと思います。

株式投資の申告方法は3種類

 一部、前回のおさらいになりますが、株式投資の場合、確定申告の方法が3種類あります。総合課税、申告分離課税、申告不要(証券会社が代行)です。それぞれ申告手続きに違いがあります。

総合課税 ・給与などの他の収入と合算して申告
・一般の所得税の累進課税制度が適用される
・配当控除が受けられる
・譲渡損失との損益通算ができない
・自身で確定申告が必要
申告分離課税 ・給与などのメインの収入とは別枠で申告
・税率は一律20.315%(一部20.42%)
・配当控除はない
・譲渡損失との損益通算ができる
・自身で確定申告が必要
申告不要 ・証券会社が代行して別途申告
・税率は一律20.315%(一部20.42%)
・配当控除はない
・損益通算できない

といった内容になっています。全てにおいて有利なものがないため、自身の状況に合わせて使い分けないと、税額やコストが変わってきてしまいます。なので、ケースごとに何が得になるかを考えてみたいと思います。

物臭な人には、申告不要がおススメ

 これはシンプルで一番わかりやすい。最も手間がかからないのが、申告不要です。証券会社のほうで代行して申告してくれますし、税金も源泉徴収され代わりに収めてくれるので、自分では何もやらなくてよいからです。普段会社勤めをしていて時間をとれない人とか、家事や子育てで忙しいという人には、取引のみに時間を割くことができるので良いかもしれません。

 ただ、デメリットもあります。まず、税率が20.315%に固定されるので、小額投資の場合は税率が高くつきます。さらに、配当控除が受けられないのと、損益通算(損失を他の収益で穴埋めすること)ができません。そのことから、スタートアップの時点では最も納税額が高くなる可能性があります。

できる限り税金を抑えながら始めたいなら、総合課税

 先の表にあるように、総合課税の特徴は唯一、累進課税制度と控除が適用されるということです。累進課税制度とは、収入の少ない人の税率は低く、収入の高い人の税率は高く設定する制度です。この収入の少ない人の税率は低くの部分を活用すれば、納税額を抑えられます。次の表をご覧ください。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円
※実際にはこの税率に、復興特別所得税0.315%が加算されます。

これが累進課税の比率です。所得金額が330万円~694万9,000円になると、申告分離課税と同じ税額になるのがわかります。しかも、控除も受けられるので、収入の合計額が694万9,000円までだったら総合課税で申告したほうが税率が低い分、納税額が安くなるのがわかります。投資を始めたばかりでできる限り出費を抑えたいなら、この方法が最適です。

 ただし、この手を利用するためには自分で確定申告しなくてはなりません。そのために、いくら儲けたのか記録をつけ、集計する作業が必要なので、かなりまめな人でないと年始に苦労するかもしれません。

 さらに、収益が大きくなると累進課税制度による税率のアップで、納税額が大きくなります。あくまで、個人投資家の節約術といったところでしょうか。

投資額が大きくなったら、申告分離課税

 申告分離課税の大きな特徴は、どんなに収入が増えても税率が一定ということです。累進課税制度の適用を受けないので、税率がアップするということがありません。なので、収入が695万円以上になったら、申告分離課税へ切り替えると納税額を抑えられます。給与収入や事業収入の場合は法律上、総合課税に分類されるので収入が増えても累進課税制度適用のままですが、投資の場合は申告分離が可能なのでこの手が使えるのです。

 さらに、投資の場合は相場の関係上、損失を計上するケース(損切り)もありますが、この損失を他の上場株式から得た収益で穴埋めすること(損益通算)まで認められているので、より効果的です。

 ただし、この場合も自身で確定申告する必要があります。もっとも、ここまで収益が大きいともはや投資だけで生活できるレベルなので、時間が取れるかもしれませんが。

 それと、配当控除が受けられません。とはいえ、税率アップのダメージよりは小さいので、総合的に考えると申告分離したほうが得です。

なにはともあれ、NISAはやろう

 そして最後に、日本政府の政策として導入された投資の優遇措置であるNISAですが、これはどの事例であっても入ったほうがお得です。なにせ、一定額が非課税になるからです。一般NISAは口座開設から5年間限定で年額120万円まで(2023年まで開設に限る)、積立NISAは開始した年から20年間年額40万円まで非課税なのです。

 さらに、2024年からNISA制度が大きく変わります。最大のメリットは、無期限になったこと。今までは期間を区切られていましたが、なんと政府が終了と言わない限り一定額が永久に非課税なのです。

 加えて非課税枠の金額も大幅にアップし、併用も可能となるとのこと。投資を始めるのに、こんなにおいしい制度はありません。ぜひ、活用しましょう!

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