投資の税制面での特徴

 多くの方は会社勤めをして収入を得ているかと思います。その際、給与は給与所得に区分されるので、納税の際に累進課税制度に合わせて税率が適用されます。庶民の場合は所得が低いため、5%、10%あたりで済みますが、所得が増えると最高で45%も取られ、負担が増えてしまいます。

 しかし、投資の場合はこの税率が適用されません。ではどうなっているのでしょうか?

投資は給与所得に区分されない

 日本の場合、投資をしている人の割合が1割程度しかいないので、自分には関係ないと思って、知らない方のほうが多いと思います。しかし、ここ近年は少しずつではありますが、投資に挑戦する人の数が増えており、無関係ではいられない状況になってきています。

 ただ、いざ初めてみると様々な違いがあります。その一つが所得区分です。

 投資の場合、労働対価としてお金を手にするわけではないため、給与ではありません。かといって、何か商売を始めてその売り上げからお金を得ているわけでもないので、事業所得にもなりません。

 実は、所有している金融資産の種類と収入の出所によって複数の区分に分かれます。

利子所得

 預貯金や債券(国債、地方債、社債などの公社債)の利子、金銭信託、貸付信託、公社債投資信託の収益分配金が、利子所得の区分になります。税法上は総合課税ですが、一般的には源泉分離課税方式が適用されます。

利子所得の金額=利子収入額(源泉徴収される前の金額)

 そして税率は、

所得税15%+地方税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%

になります。

 さらに、利子所得には累進課税制度は適用されず、金額にかかわらず税率は一律です。

配当所得

 株式や証券投資信託を所有すると、配当金や分配金が定期的に支払われます。その収入が配当所得にあたります。

配当所得の金額=配当収入額(源泉徴収される前の金額)ー負債の利子※
※株式や投資信託を購入するのに、借入金がある場合

 税率に関しては一部選択制になっており、これによって異なります。原則としては、他の収入と合算して総合課税として扱われるので、その合計金額に応じた累進課税税率が適用されます。この場合、配当控除が適用されます。

 しかし上場されている銘柄などについては、申告分離課税もしくは確定申告不要(証券会社を通じて源泉徴収されるので)方式も選べます。この場合は利子所得と同じく一律、

所得税15%+地方税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%

の税率となりますが、非上場株式などは、

所得税20%+復興特別所得税0.42%=20.42%

の税率となります。申告分離課税と確定申告不要の場合は、配当控除は適用されません。

 ちなみに、申告分離課税を選択した場合は証券会社で源泉徴収されないので、確定申告しなければなりません。その代わり、上場株式等の譲渡損失(損切り)との損益通算ができるので、節税対策として選ぶ方もいます。

総合課税 申告分離課税 確定申告不要
 税率 他の収入と合算した
金額に応じて課税
20.315%(上場株式等)
20.42%(非上場株式等)
 確定申告の必要性 ×
 配当控除の適用 × ×
 上場株式等の譲渡損失との 
 損益通算
× ×

譲渡所得

 株式や証券投資信託などを売却した際の収入は、譲渡所得に区分されます。自分から他の投資家へ株式を譲り渡すからです。譲渡所得の金額は、譲渡価格(売却価格)から取得費(購入額)と譲渡費用(手数料など)と負債の利子(借入金を使って株式などを取得した場合)を差し引いた額になります。

株式等の譲渡所得の金額=譲渡価格ー取得金額ー譲渡費用ー負債の利子

 株式や証券投資信託などを譲渡した際、税率は一律20.315%所得税15%+地方税5%+復興特別所得税0.315%)で、申告分離課税されます。

累進課税制度が適用されない場合が多い

 今見てきたように、投資の場合は株式等で例外はありますが、そのほとんどが一律20.315%固定税率を適用されるという特徴があります。投資による収入が小さい時は、給与収入より税率が高くて負担が大きいですが、累進課税制度が適用されないので収益が増えるほど節税効果が表れてきます。

 なので会社の経営者などは報酬を現金では受け取らず、自社株買いする形で受け取ることで税率を下げ、さらに株価上昇に伴う差益も受け取ることで収入を増やす手を使う人もいます。

まとめ

 このように、給与収入や事業収入と異なって、投資によって得た収益は大きく税制に違いがあります。特に、固定税率というところを活用するのは資産家の常套手段となっています。そしてこの制度は身分関係なく庶民にも適用されるので、私たちも長年投資に携わればその恩恵を受けられる可能性が出てきます。

 なので、資産管理の一環として、将来の資金作りのために、投資をする手もあるのではないでしょうか。

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