2025年5月10日土曜日

MMTは日本にとって命取り

 ここ近年、MMT(Modern Monetary Theory 現代貨幣理論)を押す人々が多く目につく。これを押しているのは、福祉拡充や生活保障など大きな政府を求める左派の人に多い。たとえ一人一人のコストは高くなかったとしても、福祉や生活保障は庶民を対象とするため人数が多く、合算するととてつもない金額になってしまう。当然、どうやって多額の資金を工面するかという問題が出てくるので、その策としてMMTを主張するのだ。

 しかし普通に考えたら、そんな上手い話あるか?と疑問に思うだろう。そこで今回は、MMTの中身と実体、成否について解説する。


MMTとは何か


 そこでMMTとは何かを知らないと始まらないので、これについてまずは説明する。これは現代とは名が付いているものの、それほど新しい概念ではない。前からあったと言えばあった。それが、近年また掘り起こされたというのが経緯だ。

 で、その中身だが、これは政策ではなく債券をどう解釈するかという楽観的予測のようなものだ。つまりこれ自体が何か対策になるというものではなく、むしろ現状維持をするための方便と捉えるのが正しい。

 詳しく説明すると、MMTの理屈では日本のような国の場合、国立印刷局や造幣局があるのだから、国債の返済に税金を充てるのではなく、新たに発行(印刷・製造)した貨幣で返済すればいくらでも無限に借金できるし、財政破綻も起きないという理論だ。そう、財政破綻は起きないという楽観的な推察を説明しているだけで、何か新たに政策を実施するという話ではないのだ。

 これをちょっと小難しく熱を込めて力説するので、マネーリテラシーのない将来を考えない怠惰な庶民がまんまと引っかかってしまって、もっと国債を発行することを安易に支持してしまっている。


MMTの問題点


 ではこのMMTにおいて、問題点や見逃している点はないのだろうか?実はこれが、山ほどある。一つ一つ見ていこう。


①実体経済が伴わない


 MMTの場合、お金を増やす方法が造幣局での貨幣の製造なので、市場経済から生み出されたものではない。さらにそのお金を国債の返済に充てるのだから、そのお金は市場には流れない。

 結果、何の経済波及効果ももたらさないので、市民生活に好循環は生まれず、停滞の一途をこのまま辿るだけである。


②通貨の信用が下がり、国際取引で使用できなくなる


 経済活動によって生み出されたお金ではなく、ただ製造しただけで流通させたとなれば、日本円に経済実態が伴わないことになるので、世界三大通貨と言われるほどの高い信用と価値を一気に失う。

 そうなれば、価値のない円建てで決済するのは危険だと市場は判断するので、おのずと円の使用は敬遠され、国際取引で用いられなくなる。結果、国際市場での円の流通量は減ってしまう。


③円の国際的信用が落ちることで輸出業が打撃を受ける


 そして、日本円の国際的信用が落ちることで一番打撃を受けるのが、日本の主要産業である輸出製造業だ。トヨタ、ホンダ、任天堂、日立、川崎重工業など、海外にも販路を持つ主要企業が決算する際に、円に換金するのをためらわざるをえなくなり、ひいてはこれらの企業の経済活動の足を引っ張ることになる。

 そうなれば、業績にも多大に影響を及ぼし、さらなる不景気と大幅な税収減少を引き起こすのは馬鹿でもわかるはずだ。


④税収減少を補てんするために、さらに増税+国債発行


 税収が減るとなると、その足りない分をどうにかして補てんしないと社会システムを維持できない。そのためには、さらなる増税なり新たな国債発行なりしなくてはならない。増税すれば市民生活が危ぶまれるし、国債発行だと悪循環におちいる。


国債の発行数が増えるので信用格付が落ち、金利が上がる


 結局MMTは、今まで通り大量に国債を発行しましょうという話なので、発行数は増える一方である。上記のことも考えると、むしろそのペースは増加することも考えうる。

 そうなると格付会社はその点を査定するので、ただでさえ下げ止まりしない日本国債のランクがさらに下がることになる。ランクが下がった分、信用を失うので国債の買い手がつかなくなり、投資家の気を引くためにさらに金利を上げざるをえなくなる。

 金利を上げるとその分、利子の支払いが増えるので何の行政サービスにもつながらないただの支出も増えることになり、財政を圧迫することにつながる。


⑥BBBランクを下回ると、買い手がまずつかない


 今現在日本国債の信用格付は、海外の格付会社の場合AAもしくはA+で、G7中イタリアに次いで低い水準にまで達している。金融市場において債権の信用格付はBBBまでが安全とされているが、A+まできているとなるとAの次はいよいよBBBなので、これはもはや危険水域でしかない。

 そしてBBBを下回ると、市場のルールとして投資対象として不適格との判定がなされるので、国債の買い手がつかなくなる。結果、国債を発行しても現金化できず、国家予算に組み込めないということになる。


⑦遂には債務不履行(デフォルト)を起こし、全ての行政サービスが停止する


 この行く末だが、国債を発行しても現金化できない以上、資金がショートするので、返済ができなくなる。つまり、債務不履行いわゆるデフォルトになるのだ。

 そうなると大変で、債権者からの取り立てによって借金の返済を最優先にしなくてはならなくなるので、多くの行政サービスに配分していた予算をカットせざるをえない。当然予算カットされるからサービスを維持できず、停止や廃止を余儀なくされる。いわゆる緊縮財政を義務付けられるのだ。


⑧最後、世界経済まで混乱させて世界中のお金が消える


 まだあるのかと思うだろうが、最後の話をする。日本ほどの人口と経済規模を持つ国がデフォルトを起こせば、世界経済にも大打撃を与えるのは想像に難くない。以前ギリシャ危機があったが、あの時にも相当世界経済は混乱し、記録的な株価下落も発生して多くのお金が消失した。G7でもなく、日本より人口も、経済規模も、国家予算も小さい国であるにもかかわらずだ。

 これがほぼ全ての数値で上回る日本でデフォルトが発生したらどうなるだろうか。少なくとも世界において、ギリシャ危機以上の経済損失を招くことは間違いない。そうなると、世界における日本のポジションは失墜し、先進国としての扱いもされず、失われた30年どころの話ではなくなるだろう。


結論:MMTは空想で、高福祉の大きい政府は自滅する


 こうして見るとわかる通り、MMTは一時的に逃げ切れる人が一部だけ生まれはするが、遠からず自滅の道を歩むだけなのだ。とある試算によると、日本は今のペースで行ったら10年後にはデフォルトするとの結果が出ており、もはや新たな借金を作れる国ではないのだ。

 すでに日本でも夕張市がデフォルトを起こしているし、海外を見てもギリシャ危機によって世界経済に大打撃を与えた。これは他人事ではないし、いい加減先延ばしするわけにはいかない喫緊の課題である。

 だからこそ国民一丸となって、経費削減に励み、政府および公費に頼らない自立した生活と収入を早急に作らなければならない。

 手厚い福祉など、言語道断である!

0 件のコメント:

コメントを投稿