行政と富裕層は本当に守銭奴なのか?

  税金ばかり取るくせに行政サービスが悪い、もしくは追い付いていないみたいな話を時々聞く。行政サービスが充実すれば生活が楽になるのだが、そもそもそんなに不十分なのだろうか?

多くの人が税金以上のサービスを受けている!?

 実際のところ、市民はどれだけ行政サービスを受けているのだろうか?受けた行政サービスの金額と支払った税金の比率を比べた時に、ちょうどトントンになるのは年収600万円くらいなのだそうだ。これを超えると、税額のほうが高くなって元が取れないという。

 ということは、年収600万円を下回る人は支払った額以上のサービスを受けているということだ。現時点の日本の平均所得が600万円なので、単純計算でも半数の人がこれにあたる。中央値で見たら300万円くらいと目されているので、8割くらいの人が税金以上のサービスを受け取っていることになる。

 つまり、少数の富裕層によって庶民の生活が支えられているという訳だ。

なぜ多くの庶民は知らないのか

 しかし、多くの庶民はお釣りがくるくらいサービスを受けていること知らないだろう。なぜか。一つはマスコミがあまり報じないからではないか。低単価の商売である以上、収入の多くは庶民から得ている。そのため、顧客である庶民に都合の悪い情報は、客離れを引き起こす可能性があり報道しにくい。行政を叩く大義名分も薄れてしまうため、見てみぬふりをするだろう。

 二つ目に政治家の問題もあろう。我が国は民主主義を採っているため、選挙制度がある。投票によって議員が決まる訳だが、庶民の受けが悪い情報は得票数に影響するので、声のボリュームを下げざるを得ない。特に大衆迎合主義の議員や政党には、都合が悪いだろう。

庶民への迎合の末路

 このまま庶民へ迎合して未来は良くなるのだろうか。言われるがままに行政サービスを拡充すれば、当然税収が足りなくなる。もうすでに我が国は多くの借金を抱えている。地方債だけでも合計約200兆円あり、国債に至っては約1000兆円にも達する。合計で約1,200兆円もの借金を抱えているのに、どうやって拡充しろというのだ。

 MMT側の人は、債券の多くは日本国民が買っているのだから、外国へ流出していないので社会は回ると主張しているが、これに反して夕張市はデフォルトを起こし、多くの行政サービスの停止に追い込まれてしまった。皮肉なことに、MMTでは回らないことを夕張市が証明してしまった。

緊縮財政への覚悟

 夕張市が財政破綻した最大の原因は人口減少だ。そしてこれは、日本全体でも起こっている。

 さらに、過度の大衆迎合で財政破綻しかけたギリシャも大きな問題となった。一度緊縮財政を敷いたものの、国民の反発から緩和政策を唱える政権が樹立されたが、ドイツからの鶴の一声によって結局緊縮財政に戻さざるを得なくなった。

 上記の事例を見てわかる通り、大衆は将来のことなど考えてもいないのだ。今しか見ていない者の話など聞いていても、将来の行政の在り方など見えてこない。本音では自分の懐が痛まずにサービスを受けたいのだから、人間の欲とは果てしないものだ。でも、それでは採算が合わないので破綻するのは確実だ。

 どうしても存続を図るなら、サービスの拡大ではなく少しずつ緊縮していき、慣れていくことを覚悟しなければならない。

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