一般的にあまり自覚されていないが、日本は意外とギャンブル天国である。公営では競馬、競輪、競艇、オートレースがあり、個人資本ではパチンコと宝くじとtotoがある。お客は一攫千金を夢見てチケットを買うのだが、まず儲かっている人はいないし、おかしなことに1等が当たっても自己破産している人の率も高い。なぜこんなにもギャンブルは儲からないのだろうか?そして儲からないにもかかわらず、なぜ止められないのだろうか?
マイナスサムゲーム
まず知っておかなければならないのは、お金の世界には3つのゲームがあるということだ。プラスサムゲーム、ゼロサムゲーム、マイナスサムゲームだ。プラスサムゲームの代表が投資で、株価上昇や配当金が手数料を上回るので社会全体のお金を増やすことができる。ゼロサムゲームと言ったら給与。働いた分しかお金をもらえないので、等価交換ルールが適用されている。
ではギャンブルはどうかというと、マイナスサムゲームだ。胴元がいて、その胴元がチケットを販売することで一定のお金をあらかじめ奪ってしまうし、お客の勝率も低い。そもそもギャンブルは胴元が儲かるようにしないと営業を継続できないから、必ずお客に損をさせないといけない。実際、宝くじなんかはみずほ銀行の取り分が50%と非常に高く、お客が極めて儲けにくいように設定されている。しかもチケット制なので一回きりしかチャンスがなく、リカバリーが効かないのも致命的だ。
当たったら当たったで散財する
でも当たったら大金持ちになれるじゃないかと思っている人もいるだろう。だが実際には自己破産している人が多いという、悲しい事実がある。というのも、一瞬にして大金を手にしてしまうとお金の扱い方を習得していないから、散財してしまうのだ。臨時収入であるにもかかわらずお金が無限にあるような感覚に襲われて生活レベルを上げてしまい、出費を増やしてしまうのだ。
そもそもギャンブルに興じていることから、刹那的なお金の使い方をする人格を持っていることがわかる。そんな人がお金の扱いなどわかる訳もなく、増してや計画的に運用するほうへ自分の意思で舵を切れるほど理知的なタイプでもなかろう。そんな人が大金を手にしたら、無制限に消費すると考えるのは想像に難くない。
にもかかわらず、なんでハマるか
こうして見ると、買っても負けてもすっぽんぽんになるのが目に見えているのに、なぜはまり、止められないのだろうか?そこには、人間の本能に基づく心理が働いている。それは一つではなく複数の要因が絡み合っていることが多い。
①単純かつ一瞬で判別
ギャンブルのシステムは非常にシンプルだ。当たったか外れたか、そろったかそろわなかったかというYES/NOの二項で成り立っているので、どんな人でも成功と失敗が判別できる。その上、一瞬で結果が判明するので上手くいっているのか失敗したのかわからない悩ましい期間がないので、頭を使う必要が無く気が楽である。
②成功の再現への期待
人間は一度成功するとそれが有効手段であると錯覚し、更なる利益を欲して再現を試みようと期待する。なので同じ手段を用いるべく何度も繰り返してしまう。結果、どんどんのめり込んでしまう。
③損失を取り戻したい願望
しかし成功というのは再現性が低く、同じ手で再度上手くいく確率は極わずかだ。それは手が良かったというよりたまたま運が良かったケースのほうが多いのと、同じ条件がそろうことがまずないからだ。
なので続ければ続けるほど失敗と損失が嵩むことになる。そうなると人間はストレスと不安感に駆られ、必然的にその損失を穴埋める行動を採ろうとする。つまりリベンジを試みるのだ。これによってさらに泥沼にはまってお金が尽きるまで抜け出せなくなる。
精神障害や境界知能とギャンブル
近年医学界で問題視されているのが、精神障害や境界知能とギャンブル依存の関連性だ。発達障害や境界知能の衝動性の高さ、無計画さ、想像力の低さ、手軽さからギャンブルに手を出してしまい、依存性、興味関心の狭さ、切り替えの困難から抜け出せなくなり、依存症へと発展するケースも多々見られる。そのために借金まで抱えるケースも珍しくなく、生活に支障をきたすため脱ギャンブルプログラムが必要である。
ギャンブルが趣味と言うのは・・・
趣味だからいいじゃねぇかという台詞もよく聞くが、それって結局他人に対してではなく自分への言い訳なのだろう。人間はどうしても自分を守ろうとするために、無意識に自己正当化しようと発言や行動をとる。この心理のことを防衛機制と言うのだが、ギャンブルを止められない時にもこの防衛機制が働く。ギャンブルの誘惑に負けたことを認めると、自分の不甲斐なさからプライドに傷がつきストレスとなり、精神が落ち込むからだ。
それを防ぐためにはギャンブルは趣味という言い訳は都合がよいので必要ではあるが、止められないジレンマを抱えることになるので厄介である。
ギャンブルをしなければ老後の資金が貯まったかも
長年にわたってギャンブルにお金を投じているとなると、失ったお金の総額は100万円単位どころか人によっては1000万円単位に及ぶだろう。それだけのお金があったら老後の生活にかなり余裕が生まれるだろうから、困窮しなくて済むはずだ。
それを知ってか知らずかギャンブルへお金をつぎ込むのは上策ではない。そのお金を投資へ回して運用していれば、さらに憂いのない生活ができるかもしれない。ギャンブル程年利の悪い金融商品はないと、つくづく思う。
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