健保組合の経営悪化問題

  2022年に社会保険の健保組合の経営状況についてレポートがあった。これによると、半数の組合が赤字経営に陥っているそうだ。これは日本の医療分野における社会保障の一大事だ。もしこのまま赤字経営が続けば、医療機関を利用しても保険での補てんができなくなり、自費で賄わなくてはならなくなる。今回はこの件を取り上げる。


保険組合の資金がショートしたら
 既に半数が赤字ということは、資金がショートしかけているということだ。もっと言えば、今黒字経営できている組合も、これを維持できるとは限らないということが言える。では、資金がショートしたらどうなるだろうか?

自費で支払いが増える
 払えるお金がないから、保険負担を減らさざるを得ないだろう。なるべく出費を抑える手段に出ないとならないから、自己負担割合の増加が考えられる。ただこれには法律改正が必要なので、健保組合の独断ではできない。政府が検討するかどうかがカギとなる。

保険対象疾患の削減
 これも支出削減策として、考えうるだろう。さすがに風邪や骨折などのありふれた疾患は、そうすぐには指定を外さないだろうが、高額となる指定難病とかは可能性が無いとは言えない。とはいえ、これも厚労省に決定権があるので、健保組合に決定権が無いからすぐには実行しないだろう。

新たな保険対象疾患の認定の阻止
 これは既にやっている可能性は高い。赤字経営の状態で新たに保険対象疾患が増えたら、これに比例して出費がかさむので、政府の方で認定の阻止をしていることが考えうる。

保険料徴収率の増加
 出費を抑えるだけではショートを防げないので、保険料収入を増やす手段も考えねばなるまい。ただ、保険料率は都道府県ごとに決めているので、各自治体が増額するかどうか判断することになる。


原因は何なのか?
 そもそもの話、何で健保組合は赤字経営になってしまったのだろうか?

人口の減少
 ここ近年、日本は人口が減少している。それどころか減少幅は拡大しており、この傾向に収束の目途は立っていない。これに比例して労働者数も減少しているので、保険料徴収額も減っている。

高齢化率
 高齢者といえば70、80、90代の方を考えるかと思うが、50、60代も若年層と比べると人口比率が高い。そして年齢が高くなるにつれて老化や生活習慣病の発症確率が上がるので、医療機関の利用頻度も上がる。結果、健保組合の出費が増えてしまう。

日本の高い受診率
 日本の場合、他国と比べると自己負担額が安いという事情から、国民の医療機関の利用頻度が高いという。そのため明らかに自宅で直せるような軽い疾患でも、医療機関を利用するケースが多い。包丁で指を切っただけでも救急車を呼ぶ人がいることからもわかる。
 そもそも日本人は他国と比べると不安神経症的傾向が強いという研究結果があり、些細なことでも心配になる上、医療費が安く抑えられていることから、気軽に医療機関を利用できてしまう体制が医療費増加につながっている。


政府の対応は?
 もちろん政府も手をこまねいているわけではない。社会保障は日本の行政の一番の課題とされているので、既にいくつかの施策を打っている。

健保加入対象範囲の拡大
10月1日から社会保険が変わりました!でも書いたが、パート・アルバイト労働者の社保適用範囲を拡大した。しかもこれは事業者に対する義務なので、労働者側が希望すれば必ず加盟させなければならない。厚生年金被保険者数常時501人以上から101人以上に、継続1年以上の雇用見込みから2ヵ月超へと、かなり適用条件を緩和したので、新規加入者は一定数あったのではないかと思われます。

セルフメディケーション税制
 この制度はあまり聞きなれないと思います。医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」で詳しく説明しているが、検診や予防接種の利用によって普段から健康に務め、軽い疾患なら医療機関に頼らず指定市販薬で直した場合に適用される税制優遇のことだ。検診や予防接種は疾患にかかっているわけではないので、保険適用外の医療行為となり、健保組合には痛手が無い。さらにこの機会に健康に努めてくれたら疾患にかかりずらくなるので、より医療機関の利用頻度が下がって健保組合の支出が減る。
 それでも病気にかかったとしても、症状が軽くて自宅で直してくれたら、もっと医療機関での診療が減るからより良いという訳だ。


私からの提案
 果たして上記の政策だけで十分か?と言われると、中々疑問である。特に人口減少は根本的解決に至っていないので、ずっと問題として残り続けている。そこで、私が考えるさらなる手はこれだ。

移民の受け入れ
 自力で人口を増やせない以上、移民を受け入れることを考えねばなるまい。既に欧州の多くの国はかなり前から人口減少に転じており、移民受け入れに舵を切った国が多い。さらに発展途上国出身者ほど多産の傾向にあるので、人口増加に貢献できる。
 保守派は単一民族性に重点を置きがちだが、そもそも日本人は純血種ではない。南から縄文系の民族が移り住み、北からはアイヌ系が入り込んだ。その証拠に長野県にもアイヌ語の地名が残っている。弥生時代になって朝鮮系の人が入り込み、さらなる混血が進んだ。沖縄なんかは台湾や東南アジアと交易をしていたから、インドシナ系やポリネシア系との混血もあるだろう。明治に至っては樺太や千島を国土に加えたので、ロシアの血を引く人も潜在的にいる。なので、民族性の論理は元から破綻している。
 とはいえ、移民受け入れは平均賃金の低下というマイナス効果もはらんでいるため、どっちに転ぶかはわからないということも注記したい。

103万円の壁の解消
 現在日本の税制で配偶者の給与所得が103万円を超えた場合、配偶者控除が減額されてしまう。結果、手取りを増やすために労働時間を削り、収入減や人手不足などの問題を起こしている。いっそ基礎控除額を縮小してしまった方が、労働時間に比例して収入が増えるからシフトに入ることができて、人手不足も解消する。
 さらに労働時間が伸びることによって社保の加入条件を満たす人が増えるから、相対的に健保組合の収入も増える。

M&Aの推進
 健保組合に加盟するためにはある程度の事業規模が必要になる。だが日本企業の9割が中小企業と他国と比べて非常に高く、健保組合への加入義務を果たさなくていい事業者は相対的に多いと思われる。
 M&Aを推進することによって会社の規模が大きくなるため、健保組合への加入義務を果たさなくてはならなくなり、自ずと健保組合への保険料の支払いを増やすことができる。
 しかもこれは会社にとってもメリットがある。今後存続を図るためには永続的な成長をしていかなくてはならないし、他国の企業とも渡り合っていかなければならないので、どうしても事業規模を大きくせざるを得ない。そのためにM&Aは欠かせないし、事業規模が大きくなればより多くの人材が必要になるから、キャリアのある従業員をつなぎ止めるために社会保障は重要な要素となる。
 そのためにもM&Aを促進する税制優遇や企業支援をより進めていく行政支援が必要であろう。


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