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2026年6月23日火曜日

日本の始末、欧米のマナー <異なる行儀のコンセプト>






 ”FIFA World Cup 2026”が開幕して熱戦が繰り広げられている。今回も日本代表は出場権を獲得し、決勝リーグ進出をかけてグループリーグを戦っている。自国代表を応援しようと、日本人サポーターも大勢会場へ駆けつけている。

 その際、よく日本人サポーターで話題に上がるのが、試合後のゴミ回収だ。日本代表のユニフォームを着て、青いビニール袋をもってゴミを回収する姿は今や恒例となっている。海外のメディアでもこの日本人サポーターの行為を取り上げることが多く、国民性を表すものとして紹介されている。

 だが、今回のワールドカップにおける日本人サポーターのゴミ回収に関しては、例年とは異なり賛辞だけでなく反論も多く、かなり論争となっている。私も清掃業務に携わる身として非常に関心がある。

 そこで、清掃業者としてこの日本人サポーターのゴミ回収について、日本と欧米のコンセプトに焦点を当てて、賛否を問いたい。


 日本の始末は、自分のためにするもの


 まずは第一人者の日本について分析する。日本ではこういう心がけのことを、「始末」という。昔から「立つ鳥跡を濁さず」と言われるように、来た時と同じ状態に戻してから帰るのを良しとする国民性である。要は原状回復を目的としている。だから、始末という。

 さらに日本では行儀良くするよう育てることを「しつけ」という。漢字では「躾」と書き、自らの「身」が「美」しくあらんとすることから、このつづりになっている。

 これらのことからわかる通り、日本の始末は自分に悪評がつかないようにするのがコンセプトにある。


 欧米のマナーは、日本とは真逆なことが多い


 対して、欧米にはマナーが存在する。だが、このマナーは日本の始末や躾とは全く目的が異なる。それが最も顕著に出るのが、テーブルマナーやホテルである。

 例えばナプキンやカトラリーの扱いに大きな差がある。日本人は使ったナプキンをたたむ人が結構いるが、テーブルマナーでは無造作にするほうが好まれる。日本では箸は元あった箸置きに戻すのが作法であるが、テーブルマナーではカトラリーをお皿の上に置いたままにするのを良しとする。ホテルでも日本人はリネンを元に戻してからチェックアウトするが、欧米では乱れた状態にする方がマナーとしている。


 欧米は従業員への配慮が目的


 よく日本人はこういう欧米の姿をだらしがないとか、自分勝手という風に言うが、それは見当違いだ。そもそもそれがマナーで、目的があってやっているからだ。では、欧米のマナーの目的は何だろうか?それは、「従業員への配慮」だ。

 上記のナプキン、カトラリー、リネンの例は、いずれも従業員から見て使用済みか未使用かわかりやすくするためである。そうすることで従業員が無駄な仕事をしないで済むよう心遣いがなされているのだ。


 従業員泣かせの日本人


 これに対して、日本人が使った後のベッドというのは、従業員を困らせることが多い。下手にキレイに整えるから、使用済みか未使用かわからないので未使用品でも交換しなくてはならなくことがあるし、掃除完了なのかそうでないのかもわからないから判断に困ることがある。これが病院のベッドだとなおさらである。

 ゴミに関しても、回収業者の違いや要望、安全基準に則って仕分けなくてはならないのだが、下手に身ぎれいにしようとするから場違いなところに捨てられることが多い。結果、仕分け直しの手間が増えるため、実は迷惑になることが多いのだ。


 ゴミ回収を従業員目線で見ると


 ではこの目線でスタジアムのゴミ回収を見てみよう。現地のゴミ回収のルールを知らず、業者の違いも把握していない者がゴミを回収するとどうなるだろうか?当然、間違った分別をすることになるし、下手したら分別すらもされないだろうから、従業員がそのゴミをひとつひとつ開けて確認するという膨大な手間を増やしてくれている。

 加えて給与体系の違いもある。日本は月給制や時給制がほとんどで、その日の仕事量に関わらず同じ給与が支給されるので良いが、外国ではジョブ型や裁量型が主流なので、仕事量や内容によって報酬が変わってしまう。なので、客がゴミ回収をしてしまうと座席清掃担当の仕事を奪うので、彼らの報酬を下げることになる。これは従業員にとって死活問題である。

 こうして考えると、ゴミ回収を客がやるのは決して褒められた行為とは言いがたい。従業員にとって迷惑極まりない要素が多く、むしろやらないほうがいいと思う人も少なくないのではないだろうか?そのことからも、客はゴミ回収をしないというほうが正解であるし、欧米人はそれがわかっているからゴミには手を出さない。

 つまり、日本人サポーターのゴミ回収は、「ありがた迷惑」なのだ。




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